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遠賀のむかしばなし(八話 千間川の河童 今古賀)
むかしむかし、今古賀の千間川に、河童の親子が住んでおりました。
いたずらものの子河童は、いつも元気に堤や草むらで遊んでいました。
その日は、からりと晴れた上天気で、空には一点の雲もなく、川は美しく流れていました。
そのうち、子河童は岸辺の砂っ原にあがり、村の人達がりっぱに育てたキュウリやそら豆を全部食べてしまいました。
ちょうどそこに、子供達が通りかかり、それを見た子河童は「ちょっといたずらしてやろうか」と、川の中から子供達に向けてピューツ、ピューツと水を吹きかけました。
子供達も負けてはいません。川の中に飛び込み、子河童をつかまえ、川岸まで引き上げました。
“河童は陸にあがると弱い。”といわれていますが、そのとおりです。どうすることも出来ません。
子供達は、子河童をぐるぐる巻きにし、子河童の大事な腕が、今にも折れそうになってしまいました。
子河童は、ワーン、ワーンと泣きながら「もう悪いことはせんけ、ゆるしてくれ。」と、なんどもたんのでみましたが、子供達はなかなか許してくれません。
ちょうどそこに、畑帰りのおじいさんが通りかかりました。
「これこれ、もうそのぐらいでかんべんしてやったらどうじゃね。」
あまりにかわいそうなので子供達の手から河童をはなして、川にかえしてやりました。
子河童はおじいさんになんべんも頭をピョコピョコとさげながら、親河童のいる深みに姿を消しました。
それから何日かたったある日のこと、おじいさんが同じ道を通っていると、川の中から、この間、助けてやった子河童と親河童が浮き上がってきました。
「おじいさん、おじいさん、この間は、子河童を助けていただき、ありがとうございました。おかげさまで子河童も元気になりました。」子河童はおじいさんに右腕を見せました。
「それはよかった、よかった。もういたずらするんじゃないぞ。」
「あれから、河童の病院で、そつこいという薬をつけてもらい、おかげでどうにか元のような腕になりました。」
昔から、河童は強い右腕を長くのばして魚を採ったり、いたずら子供の尻をぬく、といって、右腕はとても大切なものでした。
「これは助けていただいたお礼です。」と、いってそら豆の種を差し出しました。
そして、おじいさんがその種を畑にまくと、それはそれは沢山のそら豆ができました。そのそら豆をもっておじいさんは村の人達に配って回りました。
「これは千間川の河童にもらったそら豆ですたい。もう悪さはせんというとりますけんどうぞ河童をかわいがってつかっさい。」と、あやまってまわりました。
千間川の河童はそれから二度と悪さはしなかったそうです。
このお話にでてくる千間川というのは、いまの西川のことです。
歩いて見ようおはなしのふる里
“千間”は見わたせるといわれた千間川
今は廃線になった室木線の赤練瓦の橋脚
千間川(今の西川)